DBDマーチの概念に基づいた全く新しい生徒指導(7)

さてここから話を進めるためにDSM-5についておさえておく必要があります。

2013年の日本精神神経学会場でDSM-5日本語訳「精神疾患の診断・統計マニュアル:アメリカ精神医学会版(2013)」が販売開始されました。

DSM-5は米国で作られたメンタルヘルスの診断基準のマニュアルではあるのですが、似たような症状を一括りにするという分類であり、医学的に命名されたものではありません。つまり、DSM-5による精神疾病の診断はまだようやく研究の入り口に立った段階で明確に客観的に測定可能な脳の機能障害と定義づけられた物ではないという事です。それでも、こう言った精神医学の基礎を学ぶ事は教師にとって計り知れない価値があります。

つまり非常に重要な事実としてDSM-5は、実は精神医学領域では「医学的診断がつかない」ということを前面に押し出したマニュアルだという事です。「似通った症状を一括りの病名とする」という精神医学の診断なのですが、DSM-4からの変更として発症年齢や状況、成因が異なっても、同じ症状であれば一括りの疾患群にされました。具体的には、従来はその成因や発症の年齢から発達の問題の群に分類されていた選択性緘黙(ある場面では話せない)や分離不安障害(親から離れると不安)は、児童発達の群から不安症群に移りました。とにかく、不安が中心の症状であるとなれば、不安の群へ分類することになりました。

目に見える形で歴然と現れた客観的な症状や訴えを取りまとめて、分類上の疾患名としたのです。症状以外の「おそらくはこうであろう」という原因の推定、憶測は、どんなに確からしいことであっても極力除外されました。様々な症状は短く、分かりやすい診断基準に当てはめていくようになっています。

何を言いたいのかと言うとDSM-5は例えばガンや心筋梗塞と言った原因がはっきりしている病気の診断とは全く異なるという事です。出来る限り、主観を排除して客観的な診断を志していますが、患者の症状や訴えだけを元にDSM-5に当てはめて診断しているというだけで、レントゲンやCTスキャンやMRIで客観的に確定される他の病気の診断とは根本的に異なる訳です。言葉を変えれば、精神医学には多分に心理学的要素が含まれていると私は理解しています。
DSM-4からDSM-5に移行するこの20年間に、脳科学へのアプローチは、CTスキャンやMRI(磁気共鳴画像)、PET(陽電子放出断層撮影)、光トポグラフィーなどの脳へアプローチする手段の劇的な進歩によって大きく変わる事が期待されていました。患者の症状や訴えに頼っていた診断が観察可能な客観的な診断へと進歩すると期待され、確実視されていたのです。CTスキャンやMRIは、脳の微細な地図を明らかにし、フロイトが確信していたニューロンの異常を発見するはずでした。しかし、今のところニューロンの異常は発見されていません。また、神経伝達物質(ドパミンやセロトニン、ノルアドレナリンなど)の異常があるという仮説も証明できていません。脳にアプローチする手段は劇的に進歩しましたが、分かったことはほんのわずかなことで、100億を超える脳細胞の神秘は閉ざされたままです。

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